夜の女風

ミッツ・マングローブ自叙伝発売インタビュー

ミッツ・マングローブの幼少から現在に至るまでの複雑な心理と歩みが赤裸々に語られている自叙伝の発売を受けて、新宿2丁目とゲイを語る


 

ミッツさん、初の自叙伝を出されてどんなお気持ちですか?

恥ずかしいですよ。自分をさらけ出したことはもちろん、本を出したということが恥ずかしい。それに、新宿二丁目の人たちからしたら、どうせ綺麗事しか書いてないんでしょうって思われるのかなぁって…(笑)

 

ミッツさんの女装デビューはいつですか?

私は新宿二丁目のクラブから出てきた女装でもないし、店子やってたわけでもないくて、24歳の時に外国留学から帰ってきて、六本木の外国人系のお店で女装デビューしたんです。

 

新宿二丁目との関わりはどんなところからですか?

私は外専(日本人のうち、その恋愛志向や性志向において、その対象が外国人を専らとする者)だったから、『ARTY FARTY』(ゲイバー)なんかには行ってたけど、『ACE』(クラブ)なんかには行ってなかった。その違いのハードルはあります。当時、すでにブルボンヌさんやマツコ・デラックスさんというバディチームの女装なんかがいて手強かった(マツコ バディ時代のお仕事)。でも、チッコーネが連れ回してくれて、大御所のマーガレットさんにお会いさせてもらったり…。それまでは、何、あの人?だったんですけどね。

2005年11月号

『裏ナイスバディを探せ!!』
(バディ2005年11月号)
ブルボンヌ担当の特集で登場。編集部のパーティション横で撮影。

新宿二丁目でのパフォーマンスデビューはどんな感じでしたか?

バビ江ノビッチさんが橋渡しをしてくれた『advocates』のカイリーイベントが最初かなぁ。当時人気だっアッパー・キャムプのイベントやバブリーナさんの『MARU SHOW』なんかは、ゲリラ的に行かないと出して貰えないと思ってたので、こっそり顔を出してました。

 

『MARU SHOW』の後に誕生したのがミッツさんの『ザ・テレビ女ョン』でしたね。

私、最初はバブリーナさんのお留守番役だったのよ(笑)。彼女が地元に帰るって言うんで、『ACE』から『MARU SHOW』の枠があくから何かやらないって言われたの。ちょうどその頃、マツコさんと何かやりたいねって話にもなっていたから。

 

そしてミッツさんといえば年末の『女装紅白歌合戦』でしょうか。

マツコさんと『ザ・テレビ女ョン』をやって人気を博し、『女装紅白』も自分たちがやることになった。ここって絶対に外しちゃいけない枠じゃない? だから一回全部自分のスタイルで完成させようと思って取り組んでみました。でも、その結果がよかったか悪かったか、実はわからないのよ。

 

しかしうこうして毎年続いているのだから…。

でも去年、私は出演しなかったんです。と言うのは、私がやってるからみんなが着いて来てくれてるんなら、これは健全ではないかもしれない。私のやり方以外での新宿二丁目的な年越しの過ごし方とか、大晦日の女装のショウの見せ方なんかがあるんじゃないかって思ったのね。

2006年7月号

『スキャット三人娘』(バディ2006年7月号)
下村しのぶ氏に初めてスタジオ撮影してもらった写真。

芸能界で活躍するミッツさんを見たいと思うお客さんもいるのでは?

ゲイシーンに限らず、世間一般的に新宿二丁目のシンボルになっちゃうことに罪悪感じゃないけど、後ろめたさがあるんだよね。私なんかよりもこの街に命をかけていた人がいるのに…。突然有名になっただけで、ミッツ=新宿二丁目みたいになっちゃうのはどうかしらって。でも、その反面、女装の入門編は私でいいでしょう?これで女装に興味を持ってもらい、もう一歩中に入ったらもっと凄いのがいますからって。広告塔的な最初の入り口になっているつもりだったんだけど、これを言うと周りの女装から非難轟々で大変(笑)

 

これだけ有名になれば、ゲイの中でもミッツさんに好意を持つ人もいるのでは?

恋愛的に? そんなのあるわけないじゃない(笑)。ゲイってかなり健全で一般的なものになってきてるから、私みたいな変態のことをゲイの人たちが受け入れるわけないじゃないですか。

 

そうなるミッツさんはどんな男を見つけるんですか?

ノンケを落とすしかない。酔っ払った人とかね(笑)

 

理想の恋愛像はありますか?

理想はないんだけど、あったところで絶対にそんなことは叶わないし、世間一般の人には教えるけど、ゲイの人たちには絶対に教えないわよ。だって、そんなこと言って、また比べられたり、バカにされたりするんだから(笑)

 

普通のゲイでもなかなか幸せにはなれないですからね。

だけど、恋愛へのたゆみない幻想を抱いて、喜んだり落ち込んだりを繰り返せるじゃない? それができるだけ凄くて、私なんかはそんな起伏すらないからさあ。私にとって一番対応できなかったのは新宿二丁目の普通のゲイなんだよね。やっと解放されるって思って新宿二丁目に出てきて、それを喰らったから、そりゃもう女装するしかないよって(笑)

 

バディに関わった人たちが、現在、こうして芸能界で活躍しているのってなんだか不思議な気がしますよね。

自分もその中にいると思うと…不思議ですよね。そんなにキャッチーなことをしてるかって言ったらしてないし…。今やマツコさんなんて、日本一キャッチーな人になっちゃった。

 

ミッツさんご自身、今と昔では変わりましたか?

この位置を目指して来たんなら変わりようもあるだろうけど、全く自分を変えようとはせずに、わりと突然こういうことになったから…。どう変われって話だよね。

2006年11月号

『バディ』に登場したミッツ・マングローブ
『TOKYO LESBIAN&GAY PARADE 2006』
(バディ2006年11月号)
バディフロートに乗車。突然の豪雨や音楽が止まるという事態に…。

オネエブームってこのまま続くでしょうか。

芸能界のひとつのジャンルとしてはむしろより残っていくと思う。他のジャンルが今ここまでめちゃくちゃなことを言えないから。全部のガス抜きみたいな感じになっているからね。

 

こうしたオネエタレントの活躍にゲイはどう反応してきますか?

実際にゲイの当事者に、お前みたいな奴がいるから、普通のゲイが生きづらいんだと言われることもある。一般世間から見たときに、ゲイもいわゆるゲイの社会とテレビの中のオネエとが一色単に見られちゃうことが嫌なわけじゃない? 全部が私たちの責任ではないと思うけど、ある程度注意しながら、行動していかないとせっかくここまできたのに、また新たな誤解が生まれちゃうんじゃないかって思う。

 

最後に、バディ読者へ書籍のお薦めポイントを教えてください。

もっとムダなことをして欲しいんだよね。誤解を恐れずに言わせてもらうなら、ゲイの王道を行くんであっても、一般社会から見ればゲイは主流ではないじゃない? だったらいっそうのこともっと彷徨えばいいのになあと思う。この本にも書いてあるけど、私は彷徨ったことで、味のある女装になれたと思うの。ゲイとしてでしか経験できない複雑な道順設定があると思うから。

 

 

 

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