文 ◎ 北条貴志/ライター © La Biennale di Venezia

ベネチア国際映画祭とは……イタリアのベネチアで、毎年8月末から9月初旬に開催される映画祭で「ベニス国際映画祭」とも言われ、1932年から始まった世界最古の歴史を持つ。
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開催地は映画「ベニスに死す」の舞台にもなったリド島。歴史があるだけに会場は風格と重みが感じられる。

映画祭で上映された作品の中から最も優れたクイア映画に賞を与えるクイアライオン賞にはフランス映画「Marvin」が選ばれた。田舎に住む少年マーヴィンは、保守的な環境の中ゲイ差別等を受けながら鬱積した日々を送っている。そんな中、高校での授業をきっかけに演劇に目覚めていき、パリに上京し年上のゲイらと知り合いながら俳優として成功を収めていく。そんな彼の姿を繊細な視点で捉えた傑作だ。イザベル・ユペールらベテラン俳優が脇を固め、不安定な少年の心理を丹念に描く。
その他にも賞は逃したものの興味深いクイア映画が上映された。フランス映画「Les Garçons Sauvages」は犯罪を犯した5人の少年たちが、ある超自然的な島に連れて行かれる様を幻想的なモノクロ映像で耽美的に描写。女優が少年たちに扮する他、ジャン・ジュネやジャン・コクトーなど古典ゲイ芸術へのオマージュに満ちた作品。
レバノン映画「Martyr」は、海で遊んでいた仲間の1人が溺死した事件を契機に青年たちの生活が変わっていく様を描く。男の肉体の捉え方が印象的で、様々な描写の中からゲイ的要素が浮かび上がる。レバノンはアラブ地域の中では比較的に性的多様性に寛容な国ではあるが、未だ偏見が強い中でこうした映画が登場したことには注目したい。
また欧州議会が主体となってヨーロッパ映画の多様性をアピールするLux賞の一環として、エイズが猛威をふるっていた90年代のパリを舞台にエイズ・アクティビズムを先導した団体「Act-Up」のメンバーたちの闘争を描き、カンヌ映画祭でグランプリを受賞したフランス映画「120 battements par minute」が特別上映された。

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Marvin
監督は「ドライ・クリーニング」などでゲイネタを扱った事もあるアンヌ・フォンテーヌ。

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Les Garçons Sauvages
「ポーの一族」など一昔前の美少年を題材にした少女漫画と近いものもあるのが興味深い。

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Martyr
映画祭から予算援助などを受けて製作された長編2作目で、今後の活躍に期待したい。

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120 battements par minute
監督のロバン・カンペロは映画界に入る前にエイズ予防啓蒙活動に関わっていた経験もある。

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