人を好きになる気持ち、自我の芽生え、そしてはじめてのキス。大人の入り口に立つティーンエイジャーの揺れ動く感情を、サンパウロの降り注ぐ日差しの中でみずみずしく映し出した青春映画。
今作は目の見えない少年レオナルドの「性の目覚め」をテーマとし、幼じみの少女ジョヴァンナ、そして転校生のガブリエルと織りなす思春期特有の心情を丁寧に映し出しているのだが、それがとても胸キュン過ぎて、可愛らしくもあり、照れくさくもあり、どこか懐かしくもある展開が続く。

監督のダニエル・ヒベイロ自身はゲイであることから、レオとガブリエルの関係は共感を持って描いたというだけあって、二人の関係性は自然で、ゲイであることが普通に描かれているのもイマドキで良い。そんな中、ジョヴァンナの立ち位置がもたらすストレート側の気持ちの描写も素晴らしく感じられた。例えば、レオがジョヴァンナにゲイであることをカミングアウトするシーンがあるのだが、レオは悩むわけでもなく普通に告白をしてしまう。それに対し、ジョヴァンナは予想外の出来事に複雑な気持ちを抱え、その場から逃げ出してしまうのだ。なんら特別な描写ではない展開なのだが、ここではレオがゲイであることや盲目であることで傷つく恋心を映すのではなく、逆にジョヴァンナのストレートだからこそ、どう受け止めればいいのかに悩む姿が映し出されている。さらに、ジョヴァンナはガブリエルに恋心を持っていたこともあるので、きっとここには二重の思いが存在する。だからこそ、ゲイが観ても楽しめる映画だし、ストレートの人たちが観ても楽しい映画だと思えた。たくさんのLGBT作品がある中で、僕たち自身に同感させる場面を重視するものが多いが、この作品は両者に向けたメッセージがバランスよく保たれている。

そして、ベル・アンド・セバスチャンの「トゥー・マッチ・ラブ」の音楽も欠かせない要素になっている。正直、アットホームな展開の映画でここまで音楽が相まって爽やかな気分(と言うか聞き入ってしまったの)になったのは初めてで、青春映画にふさわしいこの上ない心地良さだ。

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レオはちょっと過保護な両親と、優しいおばあちゃん、いつも側にいてくれる幼じみのジョヴァンナに囲まれて、はじめてのキスと留学を夢見る。思春期を迎え、何にでも心配ばかりしてくる両親に反抗心を抱きつつ、レオは大人の入り口に差し掛かっていく。

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転校生のガブリエルと仲良くなるレオとジョヴァンナ。課題をきっかけにレオとガブリエルは一緒に過ごす時間が多くなっていく。一方、それまでレオを支えてきたジョヴァンナは、徐々に自分が必要とされなくなってしまったように感じはじめていき、3人それぞれの気持ちに変化が…。

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他の生徒とは違い、目が見えないことをからかったり、特別扱いをしないガブリエル。両親に苛立ちを募らせていたレオは、映画に誘ったり、自転車に乗ったり、ダンスをしたりと、今まで体験したことのなかった世界を教えてくれるガブリエルに心惹かれていく。

この作品は本当に観ている人をあたたかく微笑ましい気持ちにさせてくれる。身体のハンデやセクシュアリティはあくまでもレオの個性のひとつでしかない。少年が大人になる過程で誰もが経験する「かけがえのない恋と出会い」を軸に、3人のきらきらと輝きながらもちょっぴり切なくも甘い成長を描いている。

最後、レオがいじめっ子たちの目の前で、ガブリエルと手を繋ぐシーンには、もういてもたってもいられないくらいの胸キュンさに、心踊ること必至。「君との出会いが、世界を変えた」ーーー。ぜひこの作品を観て、自分の青春と忘れていたあの頃のやさしい気持ちを思い出してみてほしい。

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映画 : 彼の見つめる先に
2018年3月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
2014年/ブラジル/96分/監督・脚本:ダニエル・ヒベイロ/出演:ジュレルメ・ロボ、ファビオ・アウディ、テス・アモリン、ルシア・ホマノ、エウシー・デ・ソウザ、セウマ・エグレイ/配給:デジタルSKIPステーション/アーク・フィルムズ/字幕翻訳:増子操/後援:ブラジル連邦共和国大使館
http://www.mitsumeru-movie.com

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