Sandra Weller © Berlinale 2015
◎ベルリン国際映画祭
レポート:北条貴志
今年のベルリン映画祭で上映されたクィア映画は国籍も多彩ながら、ゲイの登場人物を多角的な視点で捉えた秀作が多かった。
アメリカ映画『I AM MICHAEL』は実在の人物を主人公に、病気を契機に宗教に傾倒し、ノンケとして生きることを選んだあるゲイ・アクティビストの複雑な半生を映画化。主演はゲイ役を演じるだけでなく、自分の監督作にもゲイ要素を盛り込むことが多いジェームズ・フランコ。
イギリス映画『EISENSTEIN IN GUANAJUATO』はロシアの映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインが映画の撮影のために訪れたメキシコで知り合った地元の男性と恋に落ちる様をゴージャーズな映像美で描いた作品。監督は日本でも知られているピーター・グリーナウェイ。お尻に薔薇の花を挿すアップ映像など強烈なイメージでいっぱい。
台湾映画『酔・生夢死』は台北を舞台にゲイとノンケの兄弟を主人公に、彼らの生活、孤独、恋愛などを力強い映像で描いた傑作。特に彼氏と死別してアメリカから帰ってきたゲイの兄の描写が素晴らしく感動的で、ドイツのゲイ雑誌の最優秀読者賞にも選ばれた。
ブラジル映画『ABSENCE』は貧しい母子家庭で生きる少年が、周りの環境と闘いながらゲイとして成長していく様を繊細に描いた佳作。
他にも興味深い作品が多く上映され、世界的なクィア映画の質の高さを実感することができた。これらの作品が日本でも紹介されることを期待したい。
世界で最もゲイリブが発展した国の複雑な側面を垣間みることができて興味深い。
2015年アメリカ/ジャスティン・ケリー
『I AM MICHAEL』
グリーナウェイは1996年に日本を舞台にゲイが題材の『枕草子』も監督。
2015年/イギリス他/ピーター・グリーナウェイ
『EISENSTEIN IN GUANAJUATO』
詩情あふれる映画作りで知られるこの監督の作品は殆ど日本で上映されているので期待したい。
2015年/台湾/チャン・ツォーチ
『酔・生夢死』
近年ラテンアメリカからクィア映画の秀作が相次いで登場している点にも注目。
2014年/ブラジル他/チコ・テキシーラ
『ABSENCE』
『天の茶助』で人気を集めた松山ケンイチ。他にも染谷将太・菊地凛子夫妻が開会式に登場するなど日本勢も注目された。
Alexander Janetzko © Berlinale 2015
『ベルリン国際映画祭』
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